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03 39 Wake UP


MOBLEY WORKS代表/東京
鰤岡 力也(39)
www.mobley-works.com

自由な発想で
自分にしかできない
ものづくりとライフスタイルを
探し続ける。

ファッションやサブカルチャーから学んだセンスが武器。
独学で身につけた木工技術で人気店の内装、家具を作る。

店舗の内装や家具作りをしている鰤岡力也は2010年に「MOBLEY WORKS」を設立。マガジンハウス刊『ポパイ』をはじめ、ファッション誌やライフスタイル誌などでも度々取り上げられている注目の人物だ。
大学で福祉を学んだ鰤岡は卒業後、福祉の道へ。24歳の時、「人生一度きりだから好きなことをしよう」と、以前から好きだったアメカジファッションや家具の事を知りたいと海外の中古インテリアパーツ、建材を扱う家具店『ギャラップ』に就職。「当時としては珍しくアメリカの古材を輸入し、内装や家具全般がオーダーできるショップだったので、感度の高いお客さんが多かったです。販売員として働く中で、簡単な図面をひいたりする機会もあって、徐々に自分でも家具作りがしたいという気持ちが芽生えてきたんです」と、当時を振り返る。
修業を積まずに何の根拠もなく、できるだろうと27歳の時に独立。その頃、カントリーアンティークを日本に持ってきたパイオニア・天沼寿子さんと出会う。これが鰤岡のターニングポイントだ。天沼寿子さんが営んでいた自由が丘の「デポー39」はカントリーアンティークの聖地だった。鰤岡は天沼さんから依頼され「デポー39」の家具修理を請け負うようになる。「2年後に店を閉めるからそれまでここで家具のノウハウを学びなさい」と声を掛けられ、その言葉を糧に毎日必死に働いた。ここで家具をばらしたり、組み立てたり、たくさんの家具修理を重ねてノウハウを身につけた。退職した『ギャラップ』から下請けの仕事もあり収入も安定していたが、自分らしい家具を作りたいと日に日に思うようになり、少しずつ必要な機材を集めて自分の仕事も始めた。
「僕がインテリア業界へ飛び込んだ頃、空前のカントリーブームだったんです。僕も多いにそのDNAを引き継いでいて、基本カントリーのインテリアが好きです。これから先、僕が提案したいのはカントリーを軸に男性のおしゃれ、ダテ感とかをミックスさせた“NEWカントリー”という勝手に作った新しいジャンルです。自宅兼ショールームはそれをイメージして作りました。」

修業を積んだ木工職人のマネをしても意味がない。
木工の知識にこだわらないものづくりをしよう。

「僕は後発型の人間。カンナ・ノミなどの大工道具を、長年修業を積んだ木工職人のようにきちんと扱う基礎がありません。自分らしい家具作りをするには基礎や技術も大切だけど、木工職人の視点からは生み出せない発想力が必要だと思いました。中学生から夢中になったアメカジやデザインの視点から木工の可能性を探ったんです。木工をベースにしているけど、それにとらわれないものを作る。だから【木工づくり】なんだけど僕のは【ものづくり】っていう表現の方がしっくりきます。」既存のイメージにとらわれず新たな角度から木工を捉えることで鰤岡にしか生み出せないアイデア、独自の製作方法がある。
2015年、松島大介さんが手掛ける渋谷区のコーヒーショップ『パドラーズコーヒー』の内装、家具全般を任された鰤岡は、松島さんと共に世界で一番住みたい街として注目されるポートランドへ。『パドラーズコーヒー』がポートランドにある『スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ』からコーヒー豆を日本で唯一仕入れていることや、DIYが盛んな街であることから現地へ直接行き、建物やインテリアを視察し資材を買い付けた。DIYを実践している現地の人たちの話を聞いて情報収集もしたそうだ。
鰤岡の仕事のやり方は独特だ。「70年代のレコード屋のイメージ」と言われれば、ビジュアルがイメージできる写真集や雑誌を読み、さらに時代背景を想像する。そして空間にリアリティーを出すためにアメリカから仕入れたペンキや金具、マイナスビスを使い、当時の塗装方法を研究し、施工する。ここまで勉強熱心だと誰もマネできない領域だ。興味が湧けばどこまでも突き詰め、依頼主の期待を上回るものを作る。

都内の便利なマンションよりもあえて町田の一軒家。
築70年の民家を自ら改装して自宅兼ショールームに。

2015年に転居した自宅兼ショールームは東京都町田市にある。あえて郊外へ住まいを移した鰤岡。それには確かな理由と未来への思いがあった。「夫婦してせわしなく働いていた頃に住んでいたマンションはただ寝るだけの空間。これからは家族との時間も大切にしたいと思うようになり3?4年かけて住まいを探しました。」
見つけたのは山付き一戸建て。300坪ある敷地には築70年の家がある。以前の持ち主が4回もの増築を繰り返して住んできた一癖ある物件だ。外壁とリビングの一部の壁にはレッドシダーを使用。リビングのレッドシダーは手間と予算を惜しまず、ふしなしの木だけを選定した。室内には鰤岡が製作した本棚、ダイニングテーブル、ソファーが置かれている。なかでも、昔からそこにあったような佇まいの一人掛けソファーやテーブルは存在感がある。「日本のメーカーが立てる家は建材の選び方、使い方、デザインがまるでちぐはぐ。家を建てるなら思い通りの空間を作りたかったので建材の調達から扉や扉枠などの製作など1から10まで全て自分で施しました。」
「自宅兼ショールームを町田にしたのは環境が良かったから。便利な都内のマンションに住むより自然の中で季節を感じながら暮らすことの方が価値があると思えたんです。家のすぐ裏には里山があって、よく散歩へ行きます。妻と娘と朝ごはんを持って少し歩いたところで食べたり、話をしたりして過ごすことも。以前の生活では考えられない時間の過ごし方だし、自然が身近なこの環境だからできること。」敷地内には焼菓子の出張販売『WOLD PASTRIES』を主宰する、妻・和子さんの工房がある。ファンが多く、出店の度に売切れるお菓子はここで生まれている。

これからは共感できる人と仕事がしたい。

「以前のようにたくさん仕事は入れないようにしています。仕事をする時はじっくり話を聞いて、お互い意見を交わしたり、アイデアを出したりしてから進めたいので。最近は30代の子たちが元気で勉強熱心。良い感性を持っていて、すごく面白いと思っています。彼らと同じ熱量で仕事したいんです。彼らすごく真剣ですから。お金儲けよりも面白い仕事を優先してやっていると、自ずと同じ感覚の人が集まってきて「やってみよう!」って仕事がはじまる。そういう感じが良いですね。」